イランがフセイン政権の残党を援助?
イランとシリア、イラク武装勢力を支援=イラク国防相
国防相は、記者団に対し、昨年拘束したモハメド軍と名乗る武装集団の幹部とされる男を尋問しているビデオを公開。同幹部は、イランとシリアから援助を受けていたと自白し、イラク政府への報復を警告している。
同幹部によると、モハメド軍は米軍主導の多国籍軍によるバグダッド侵攻後、フセイン元大統領により2003年3月結成されたもので、現在800人の武装勢力を有し、バグダッドなどで活動しており、一連の米軍基地への襲撃や米軍車両を狙った道路脇の爆弾は、同軍によるものという。
イランがフセイン政権の残党を援助しているというのは妙な話だ。イラクのシーア派組織、イラク・イスラーム革命最高評議会はもともと表向きはアメリカを批判しながらもアメリカとの間にパイプを保ってきたといわれる。そして、フセイン打倒はアメリカの協力なしには実現できない、という当時の最高指導者ムハンマド・バークル・アル=ハキーム師の言い分はイランをも納得させてきたといわれている。それなのに、イラクで選挙の日程が組まれ、多数派のシーア派がやっと権力を握ることができるかもしれないという状況で、イランがわざわざフセインの残党を支援しなければならない理由があるだろうか?
あえて可能性を探すとすれば、シーア派最大の聖地があるイラクにシーア派の政府ができれば、イランの地位が相対的に下がってしまうという不安もあるかもしれない。加えて、今のイラク・シーア派の最高指導者シスタニ師が政治とは距離をとっていて、イランが影響を及ぼし難いということもあるかもしれない。さらにシスタニ師の政治から距離を置く姿勢は、宗教指導者が政治に深く介入するイランからすれば不満なうえに、シーア派の教義上、相手(シスタニ師)の方が正統な姿勢であるという点でも面白くないのかもしれない。そういったわけで、イランがわざわざイラク・シーア派の足を引っ張るようなことをする理由はあるのかもしれないが、かといって先の見込みのないフセインの残党を支援することで得られるものがあるとも思えない。また、フセインの残党が援助を受け入れるというのも考えにくい。対米強硬派のサドル師や、サドル師を通じてスンニ派の聖職者グループなどを支援しているというならまだ理解できるのだが。
さらに、イラク:アラブとイランで足並みの乱れも 周辺国会議という状況を考えればフセインの残党を支援するとしたらアラブ諸国のほうだと考えるのが自然だ。
アメリカと、イラクのシーア派の関係も見てみよう。アメリカは暗殺された前の最高指導者ハキーム師とはパイプを持っていたが、今のシスタニ師にはイラン同様アメリカも影響力を行使しにくいのだろう。そのうえ、シスタニ師の、あらゆる外国からの影響を排除し民主的な選挙によってイラク国民の主権を実現するという原則論は、影響力を確保したいアメリカには受け入れがたいがそれを非難することもできないという意味で厄介なものであるだろう。シスタニ師がファルージャ侵攻にも沈黙を続けたのは、とにかくアメリカに文句を差し挟ませることなく選挙を成功させてアメリカの傀儡でない、法的に正統な政権を樹立することを最優先とし、それまでは極力自制心を保つということなのだろうと思う。(その判断が正しかったかどうかは私には疑問だが)アメリカとしては、ファルージャの件で非難声明でも出してくれればテロリストの仲間として非難できたのだが、沈黙を保っているイラクのシーア派を直接非難することはできず、イランを非難することで間接的に圧力をかけようとしているというところではないのだろうか。
シリアについてもフセインの残党を支援するメリットというのは良く分からない。湾岸戦争のときには多国籍軍に参加するなど、反米親フセインということでもないわけで、あえてアメリカの怒りを招くような行動をとるとも思えない。
とはいえ、アメリカが本気でイランやシリアにまで戦線を拡大するつもりでいるとも思えない(思いたくない)のだが・・・。
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by tyogonou | 2005-01-10 01:58 | 国際 | Trackback | Comments(0)
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