イラク議会選
イラクの選挙が一応の成功をみたようだ。
「結果が手段を正当化する」ということになっては困るが、混乱が続けば害を被るのはイラク国民なので素直に喜ぶべきだろうと思う。もちろん、これからが重要なのだが、先行きは必ずしも暗くないのではないかと思う。
宗教政党、5割近く獲得か 憲法起草などに発言力
シーア派最高権威シスタニ師の影響力が強い統一イラク同盟が最大勢力となれば、移行政府の組閣や憲法起草に当たり、宗教勢力の発言力が大きくなるのは確実だ。
シーア派というとどうしても故ホメイニ師のイラン革命を思い出してしまいがちであり、こういった意見が出てくるのも無理はない。だが、おさえておかなければいけないことは、シーア派では宗教指導者が政治からは距離を置くのが正統であるということだ。イスラム教では政教一致が原則だが、シーア派では政教一致の指導者(イマーム)になれるのはムハンマドの娘婿アリとその子孫だけであり、イラン、イラクのシーア派では行方不明になった第十二代のイマームが再臨するまでイマームのいないまま待つというのが基本的な考え方である。宗教指導者が政治に全く口を出さないということでもないが、ホメイニはイマームを名乗ったという点でも異端といっていい。



イラク・イスラム革命最高評議会はイラン政府と関係のある組織ではあるが、現在の最高指導者シスタニ師は暗殺されたムハンマド・バークル・ハキーム師の後継として迎え入れられたもので、もともとホメイニ師には批判的だった道統に連なっていた。
実際、サドル師などと比べればよく分かるように、シスタニ師が表に出てくることはあまりない。また、サドル師が「反アメリカ」という姿勢を明確に表現する一方で、シスタニ師は「イラク国民の擁護」といった原理原則に則った形で発言することが多い。下に掲載するシスタニ師自身の発言では、シスタニ師が「政党に超越する」などと主張しているが、それを原理主義的なものと解釈するのは間違いであろう。むしろ逆に、イスラム系の政党といえど政治の場ではある程度の妥協が必要であることを容認するものと捉えるべきである。宗教上高い権威を持つ自分が政治の場に身をおけば、信仰にかかわる部分で妥協することは不可能であり、それゆえ政治を「超越」するということだろうと思う。
むしろ逆に、政治から距離を置きすぎることのほうが問題であると思う。米軍のファルージャ侵攻のときアルジャジーラの取材を受けた市民の中にはシスタニ師の沈黙を名指しで非難する声もあった。そんな宗派を超えるnameには、ある程度の影響力の行使というものが必要な場合もあるだろうと思うのだ。
その点については明るい材料もある。イラク・イスラム革命最高評議会の議長で今回の選挙でも候補者リストの一位であるアブドル・アジズ・ハキーム師は、選挙が近くなったあたりから、スンニ派に対して融和的な発言をしはじめている。ハキーム師は、暗殺されたムハンマド・バークル・ハキーム師の弟であり、名門の出としての尊敬も受け、政治的に老獪だった兄の下での経験もある。ハキーム師が「政治的」な部分を引き受け、sophisticateされたところを見せるなら、そういった弱点は補えるかもしれないと思う。その上で、大筋において民主的な国の仕組みができ、意見の対立の起きにくいlow politicsにかかわる問題を地道に解決していくなら、正統性も徐々に認められていくことになるかもしれない。
大きな問題はイラクの外にある。
<イラク議会選>周辺アラブはシーア派勢力台頭に懸念
 しかし、イラク中、南部のシーア派地域で投票率が高く、同派の連合会派「統一イラク同盟」の勝利が確実になったことは「アラブ諸国にとって最悪のシナリオ」(ヨルダン人記者)ともいえる。
 イラクを巡る混乱の源流をたどれば、79年に隣国イランで王制打倒のシーア派革命が起こり、同派聖職者による支配体制ができたことに行き当たる。この混乱に乗じ、フセイン政権がイランに侵攻。サウジアラビアやクウェートなど「革命の輸出」を警戒したアラブ諸国はイラクを支援した。
 シーア派の影響力阻止を優先させた各国の外交政策が旧フセイン政権を軍事大国化させ、イラクのクウェート侵攻(90年)にまでつながった。アラブ諸国のシーア派拡大阻止の政策が、回り回ってイラクにシーア派政権を誕生させることは歴史の皮肉だ。
 シーア派勢力台頭を懸念する背景は各国によって微妙な違いがある。バーレーン(シーア派の人口比70%)、レバノン(同35%)、クウェート(同30%)、サウジアラビア(同数%)など自国にシーア派住民を抱える国では、イラクの国内情勢が自国のシーア派の権利拡大要求につながる可能性がある。特に、バーレーン、クウェート、サウジアラビアなど王制の国では、シーア派勢力は反体制色が強く、政府は同派の台頭が王制打倒と結びつくことを回避したいという事情がある。

シーア派に肩入れするつもりもないのだが、一国の多数派を占める集団が政権から排除されるような事態というのは民主主義の観点から見て異常なのであって、歴史の皮肉などということではないと思う。周辺各国の事情にしても同じである。第二次大戦後の世界の「民主化」の流れの中で、アラブ世界だけが例外であるべきだとする理由はない。
民主化を標榜するアメリカがなぜか口にすることのないことは、民主主義とは異なる信条を持つ人々が共存していくための仕組みであるということだ。民主主義を売り込むなら宗派、民族が複雑な関係を持つイラクのような国(そして今回の結果に懸念を持つ周辺の国々に対しても)に対しては、それこそが最大のセールスポイントであるはずだと思う。
 さらに、今回の選挙の大きな教訓は、アラブでの民主的な選挙は宗教勢力が大きな影響力を持つということだ。米国が「中東の民主化」要求への圧力を強める中で、エジプトなどの非宗教国家は、民主的手続きによるイスラム勢力の台頭に一層神経を使わざるを得なくなった。
確かに民主主義には反民主的で時に破壊的な政治勢力に権力を与えてしまいかねないという危険はある。また、ヤワル暫定大統領も危惧を示していたように、今のイラクにはヒトラーのような独裁者を生み出しかねないような不安な雰囲気というものがあるのかもしれない。しかし、それでも今後イラクがある程度のイスラム色を帯びていったとしても、それは仕方のないことだと思う。アメリカが「福音主義国家」になっていくとしても、それが他国に与える影響については別として、外部の人間がとやかく言うことではないのと同じだ。その動きがやがて過激で破壊的になる恐れについては、まず、その条件となるような人々の不満が、今のイラクにおいてどこからもたらされているのかを追及すべきだ。許されないのは、片方でそういった不満を煽り立てた、もう片方ではそういった不満がもたらす危険を騒ぎ立てるマッチポンプ的なまねをすることだ。


2003年4月、イラクの新しい政府について
1- Reject any foreign rule in Iraq. Emphasis is also made by His Eminence that he will not interfere in the type of government the Iraqi people wish to choose to govern the country, highlighting that Iraq is a Muslim country that draws its tenets, laws, values and education from Islam where Muslims and non-Muslims, whatever their religion may be, can live in peace and security. The new government must therefore recognize this point. His Eminence also points to the history of Shia scholars in Iraq, which, since the beginning of the last century has been confronting invading powers. Shia scholars and their sons were at the forefront of freedom fighters who faced the invading British forces despite that fact that they also endured the Ottoman invasion.
1- イラクに対する外国の支配はいかなるものも拒否すること。師は次のことも強調されている。即ち、師はイラクの人々が国を統治して欲しいと望む政府がいかなるものであろうと干渉するつもりはない。なぜなら、イラクとはその信条、法律、価値観、そして教育などがイスラムの教えに密接に結びついたイスラム教国であるが、そのイスラムの教えとはイスラム教徒も非イスラム教徒もその信仰にかかわらず平和で安全に暮らすことのできるものであるからだ。新しい政府はこの点を認識しなければならない。師はまた、前世紀の初頭に侵略者の権力に直面していたイラクのシーア派法学者の歴史についても言及されている。シーア派の法学者たちと彼らの息子たちは、彼らがオスマントルコの侵略にも耐えていたという事実にもかかわらず、侵略してきたイギリス軍と戦う自由の戦士たちの最前列にあった。
2- The Supreme Marja’iyyah is by no means whatsoever looking to establish itself as a political authority in Iraq.
2- マルジャイーヤ(シーア派最高指導者)がイラクの政治的権威となることは絶対にない。
4- The Supreme Marja’iyyah always transcends political parties and groups. It safeguards the interests of religion and guides those who distance themselves from the Marja’iyyah to the right path.
4- マルジャイーヤは常に政党や政治的グループを超越している。それは宗教の利益を守り、マルジャイーヤから距離を置く人々を正しい道に導くことになる。
FOXニュースからの質問に答えて
3- What is the role of religion in the future Iraqi constitution and what is its role in the educational and legislative systems?
3- Members of the constitution council who are elected by the Iraqi people will decide all this.
将来のイラク憲法、および教育、立法制度における宗教の役割をどうお考えですか?
イラク国民によって選ばれた憲法委員会のメンバーがこれら全てを決めるであろう。

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by tyogonou | 2005-02-07 00:28 | 国際 | Trackback | Comments(0)
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