ペリー・メイスンシリーズより その2
「われわれはいまジョージ・アンスレイとの会話の完全な録音を聞いたところですから、その会見の間にメリディス・ボーデンが電話のところへ行って、検察官を呼び出し、こうした趣旨のことをいう暇がなかったことを承知しております。”万事OKだ。ジョージ・アンスレイがわしを訪ねてきて、金を出すといっている。君はもう圧力をかけなくていいぞ”と・・・・・・。
あるいは、メリディス・ボーデンはすでに死んでいて、自分に対してなされるいかなる非難にも反駁できないのですから、多分本弁護人はこのようにいうべきでありましょう。すなわち、彼は電話のところへ行って、検査官にこういう暇はなかった―――つまり、”ジョージ・アンスレイがたったいま訪ねてきて、PRの専門家として、わしに仕事を依頼している。この建設工事に関するきみ達の検査は契約に規定されているところよりはるかに厳格なもので、何か君らの方の個人的なうらみか、あるいはある種のリベートを取ろうとする意図を顕わにしているように思える。従って、状況が直ちに好転させられない限り、わしはミスタ・アンスレイが現在被っているような検査方式が世間に広く知れ渡るよう何らかの手段を講ずるつもりだ”とね」
ちょっとの間に、アーウッド判事の顔が怒った表情から何か微笑するような表情に和らいだ。「純粋に仮定の会話として全く見事な言い回しですな、ミスタ・メイスン」
「ボーデンがすでに死んでいて、自分自身を弁護する立場にいないということを考えてのことです」メイスンはいった。
『カレンダー・ガール』
アンスレイは建設業者である公共工事を請け負ったはいいが検査官の厳しすぎる検査に工事が進まず予算もオーバーしかねない。友人にも検査官にも「利口になって」ボーデンのところへ行け、と忠告され、やむなく彼を訪れた次の朝、ボーデンの死体が発見され殺人の容疑者になってしまう・・・というのがこの話の筋。ボーデンが表向きはPRの専門家だが実際はある種の政治ボスであることはいわば公然の秘密で、彼が裏で手を回して検査官に圧力をかけさせたことは皆知っている。そしてアンスレイの弁護人であるメイスンにも彼をかばう義理はない。それにもかかわらず、法廷という場で人が自分を弁護することができずに非難がましいことを言われるという事実を残さないようメイスンに配慮させた著者ガードナーの正義感を好ましく思う。
[PR]
by tyogonou | 2007-09-09 08:08 | 社会 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fukureki.exblog.jp/tb/7417002
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< すこしがっかり ふぜけた主張と真面目な主張 >>