光市母子殺害事件判決
【光市母子殺害判決の要旨(1)】「被告人が、自己のした行為をどのように考えているのかが重要」 【死刑判決で弁護団(1)】「裁判所は被告人の心を完全に見誤った」 (1/2ページ) - MSN産経ニュース
判決では新しい供述を信用できないとされた。その理由は、1審でも控訴審でも争っておらず、今いきなり出てくるのは信用できないということだ。しかし、この不合理な判決を下す裁判所が存在する限り、被告人は怖くて争うことができない。少し争っただけで反省の気持ちがないということになり、死刑になってしまう。そんなリスクがあるのに、争っていないことについてあそこまで断じられてしまうなんて。
裁判所は死刑を免れるためにうその供述をしたと認定しているが、前提を間違っている。最初に被告が話したのは2年前の教戒師が初めて。弁護側は教戒師に証言を求める手続きを取ったが、裁判所が採用しなかった。
(今回の判決で)凶悪な事件は原則として死刑なんだ、死刑を回避するためにはそれなりの合理性と正当性がなければならないと、立証責任を転換してしまった。『無罪推定の原則』とか『疑わしきは被告人の利益』といった哲学にまったく反している
私もこの判決には疑問を抱く。
 しかし、被告人は、判決書が朗読されるのを聞いているほか、判決書や検察官作成の控訴趣意書などを読んで、犯行態様や動機について全く違うことが書かれているのは分かった旨供述していることに照らすと、弁護人に対し、判決で認定された事実が真実とは異なるなどと話したりすることもなく、無期懲役という極めて重い刑罰を甘受するということは考え難い。
下級審で争っていなかったのを方針転換したことが信用できず反省の欠如を示すものになってしまうなら、富山の冤罪事件の被告のような立場に立たされた人が自力で自分の無実を勝ち取ることは不可能になってしまう。供述を翻したことは被害者遺族がもっとも強い怒りを表明しているところで、裁判官はこれに安易に乗っかってしまったのではないかとすら思える。

個人的にはもっとも関心があった順手と逆手の問題
【光市母子殺害判決の要旨(3)】弥生さん殺害「弁護側鑑定は採用できない」
裁判所の判断を大雑把に要約すると、弁護側鑑定と遺体に残された痕跡を比較すると、逆手で親指の爪で薬指の根元を掻くような形で首を押さえつけたということになるが、不自然な態勢で窒息死させるほど強い力をかけるのも難しい。またそのような指の形では、巻き込まれた親指も押しつぶしてしまい自分も痛かったはずで不自然、また人差し指とみられる一番下の指の跡が11センチもあるが、親指が邪魔で伸ばせなかった人差し指でそんなにながい跡をつけたというのも考えにくい、ということだ。
しかし、この判断はおかしい。
弁護側鑑定では、逆手の右手が口元から首へとずれたということ、舌骨が折れてないことなどからそれほど大きな力はかかっていなかったということを推定しているが、それらを裁判所は全く考慮していない。親指の位置は親指の爪が引っかいた跡で、それ以外の四本指の位置は蒼白(そうはく)帯によって推定されるが、爪の後は短時間でつくため、裁判所が言うよう人差し指から小指までの四本の指が圧迫跡をつける間、親指がずっとその手のひらの下に巻き込まれたままであったことを意味するわけではないし、同時につけられたかどうかさえもこれだけでは分からない。親指は傷をつけた後にずれたなら、裁判所の説明は成り立たない。
もっとも問題なのは、裁判所が遺体の痕跡と、右手の逆手という仮説との形の上での矛盾を指摘できていないにもかかわらず、右手の順手という検察側の説を遺体の痕跡との整合性について全く言及せず無批判に採用していることだ。たとえば一番下の指の跡が11センチもあったという指摘。それは親指が邪魔で伸ばせない人差し指ではつけられないというのが裁判所の指摘だが、順手で小指がつけた跡という推論は少なくともそれと同じくらい無理がある。もっとも無理のない推論は伸ばされた人差し指によってつけられたというものではないのか。形が矛盾しない逆手説を捨て、形が矛盾する(かもしれない)順手説を採用するのはなぜなのか。
検察が主張しているような絞め方によって殺された被害者の遺体も数多くみているであろう経験をつんだ監察医の判断を覆すには、ちょっと貧弱な論理で私には納得がいかない。弁護側鑑定人がどういった反応を示すのか興味がある。

立証責任が検察側と弁護側どちらにあるかを考えれば、弁護側は合理的疑いを示せればいいはずだが、この判決は、現場の捜査に関われず情報にハンデのある弁護側に本来検察側に要求される以上の厳密さを要求するものだ。量刑を理由に差し戻された裁判だという状況を考えても、弁護側が憤るのも理解できる。
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by tyogonou | 2008-04-22 23:14 | 社会 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 話題の芸能ニュースの最前線 at 2008-04-25 00:58
タイトル : 山口県光市母子殺害事件の弁護団が上告
死刑判決が覆ることは無いと思う。上告は棄却されるんじゃないかな。... more
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