力士がプロテクターで身を固める日
暴行理事、親方失格&救う神なし…部屋は閉鎖か | エキサイトニュース
医師でもある大西祥平委員(日本アンチ・ドーピング機構専門委員)は「間垣親方はご病気(脳梗塞)で脳に障害があり、理事としての判断にご苦労されていらっしゃる。医者の立場からも、負担が大きく、部屋や力士を1人で守っていくのはどうかと思います」と説明し、親方失格をにおわせている。
ずいぶん酷い言い草で、こういった配慮を欠いた発言を医師がすることに問題はないのだろうか。
それはともかく、竹刀を使ったとはいえ、そのような病人が若い元気なおすもうさんを「暴行」したというのは妙な話だ。
はじめはジョークなのかと思ったが、どうやら真面目らしい。
前にも書いたが相撲というのは極めて激しく、危険なスポーツだ。生身の人間が頭から全力でぶつかり合うスポーツは世界中他に類を見ない。おたまでたたかれて皮膚が裂けただの竹刀でたたかれてアザができただので大騒ぎするなら、アメフトのようなプロテクターを着けることを先に検討すべきだ。(もっとも防具があれば安全というわけでもなく、その分躊躇無く当たれるためにむしろ酷い怪我をする可能性もある。)かつてTV局が行った実験では武蔵丸の立合いの衝撃力は1.1トンにも達した。当然相手も同じようにこちらに向かってくるわけだから、本割りの立合いで力士に加わる衝撃は2トンを軽く超えるだろう。(余談だが武蔵丸はあの体で垂直跳びで70cmを記録するほどのバネがあったという。)ふにゃふにゃとやわらかそうな小錦のおなかでさえコンクリート塀と化すというくらいだ。病人に叩かれて大事になるような軟い力士にプロテクターも着けずにそのような危険な真似をさせるわけには行かない。
少し前に相撲界でいわれていたことは力士のサポーターが見苦しいということだった。相撲とは自分のまわし一丁体ひとつで戦うものだ。仕切りのときに両腕を広げて見せるのも、武器などを隠していないことを示し正々堂々と勝負する心構えをあらわすものであるのに、ごてごてとテーピングやらサポーターやらを身に付けるのは、負傷箇所の保護や防止という重要な意味があるとはいえ見苦しいということだった。逆に言えば、それはサポーターをつけているのと同じくらい頑丈に体を鍛えぬけということだ。ずっとウェイトの軽い空手家のなかにさえ、角材で体を叩かせたり木製バットをへし折ったりできるほどに鍛える人がいることを考えれば、竹刀の打撃が怖い相撲取りなどほとんどジョークだ。
重要なのは、関節など鍛えられない部位への打撃など危険なものを選り分け、あるいは単独ではたいした害が無くとも多発性ショックをおこしたりしないよう力士の状態に注意を払うことだ。それを切り傷や痣がある、暴行だ、怪しからん、というような粗雑な議論をしていて大丈夫なのだろうか。近代的なスポーツのトレーニング理論を採用しろというが、それで大きな力を出すことは可能になるが、衝撃に耐える体を作ることができるのだろうか。トラバントの車体にベンツのエンジンをつんだような力士が増えたら、怪我はかえって深刻になるのではないか。
それからもうひとつ。批判者たちが考えなければならないのは、直接的な暴力による制裁が無くなったらそれで済むのか、ということだ。制裁がより陰湿で精神的な暴力へと姿を変えたら、そちらの方が害は大きいのではないか。力士の不審な死はいくつか例があってそれは確かに問題だ。が、まだ力士の自殺は聞いたことが無い。(それには「脱走」という行動が選択肢として確立されていることも影響しているのだろうが。)
教育現場でのいじめも問題視されるようになってから同様の変貌を遂げたことを考えれば、物理的な暴力が封じられたあとのことはきちんと考えておくのが責任ある態度だと思う。
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by tyogonou | 2008-05-25 11:32 | スポーツ | Trackback | Comments(0)
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