<   2006年 01月 ( 3 )   > この月の画像一覧
証言拒否
「逮捕で住民補償不能」 小嶋社長が住民に説明
 面会した住民代表によると、小嶋社長は「住民への瑕疵(かし)担保責任を果たしたい。逮捕の場合補償ができず、その点を(喚問では)気を付けた」と述べたという。

すごい言い草だ。別に社長が逮捕されたからといって保障ができないということはないはずだ。もちろんこれは自分が逮捕されたら思い知らせてやるぞ、という脅しとして受け取るのが正しいわけだが、偽証が罪に問われうる証人喚問の場での証言拒否の理由を利他的な善行であるかのように語るとは不遜の極みである。証人喚問において証言を拒否することが許されているのは、それが利己的なものであるからだ。究極的な利己的行動である自己保存は、それこそ誰も侵すことのできない神聖な権利であるからこそ憲法はそれを保障しているのだ。

ただし、ここで冷静さを失うことがあってはならない。どうしたことか、ジャーナリズムに携わる人間からもこの証言拒否について不満の声がもれているようである。しかし、これは憲法の保障するきわめて重要な価値なのだ。証言拒否が許されることによるデメリットはたしかに少なくはないし、それに対する憤りも確かに理解できる。しかし、免責特権(罪に問われない特権と引き換えに自己にとって不利益なことも証言させること)のようなものを認めることなしに、証言が矯正されるような法制度の害は比較にならないほど大きい。そのことをきちんと認識しておくべきではないか。

「質問に答えることが、自分を罪におとしいれると考えた場合はね、ミス・ビベンズ、あなたはただ、”憲法に定められた権利にもとづき、わたしを罪におとしいれるおそれのある質問に答えることを拒否します”とそういえばよろしい。いったん、あなたがそういったからには、地上のいかなる権力といえども、あなたに答弁さすことはできません」
セルマ・ビベンズはにっこり笑った。
「憲法に定められた権利にもとづき、わたしを罪におとしいれるおそれのある質問に答えることを拒否します」
行き詰まりを示す沈黙が、証人席の周囲に群がる人々を包んだ。やがてバーガーはため息を漏らした。それは何よりも雄弁に、敗北を物語るしるしだった。
(中略)
「このような質問が、なにゆえに証人を罪におとしいれることになるのでしょうか?」バーガーはウィンタース判事に助けを求めた。
メイスンは肩をすくめた。
「もし、わたくしの法解釈にして誤りがなければ、それは証人自身が判断することでありましょう。説明することは、かえって質問に答える以上に、証人を罪におとしいれることになりかねません」
(『義眼殺人事件』E.S.ガードナー 小西宏役 東京創元社 1961年)

[PR]
by tyogonou | 2006-01-19 13:25 | 社会 | Trackback | Comments(0)
姉歯秀次、宮崎勤、そしてスミス・ウィンストン その1
はじめて姉歯氏を見たときから似ていると思った。顔立ちそのものが似ているということもあるのだが、二人の表情や自分の侵した罪に対する態度といったものが深いところで共通しているように見える。一言で言えばそれは「諦観」だ。
姉歯氏の一連の発言は非常に率直である。特筆すべきは自分自身について語る部分であって、客観的になんの感情も滲ませることなく淡々と語る様は、他のいささかあくの強い登場人物たちが自己を正当化しようと怒りや嘆きを噴出させて見せるのとは対照的だ。そういった言い訳がましい態度は、見ていて見苦しいし、また正しいものであるはずもないが、人間の感情としてはごく自然なものであるはずだ。ところが姉歯氏が、この事件は自分ひとりではできないことだと言う時、関係のない第三者がごく当たり前の事実を指摘しているかのような口調で、あのような状況におかれた人間として当然あるはずの葛藤が全く伺われない。彼は自分の行為の善悪について全く考えることができないと言うわけでもないし、悪を実行することに価値を置くようなエキセントリックな価値観によって動かされているわけでもない。少なくともメディアを通じて伝わってくる人間像は、どこにでもいる小市民―特に堅固な倫理観を持っているわけでもないが敢えて悪事を行おうという欲求を持っているわけでもないーである。それにも関わらず彼の態度を際立たせているものは、自分の行動の犯罪性についての認識と、それにもかかわらずそれをなせという圧力との対立を、強い倫理観によって乗り越えることもできず、かといって世間ずれした「大人」な折り合いのつけ方に安んずることもできず、ただ戦うことに絶望し、考えることをあきらめた者が見せる静けさであるように思われる。
(続く)
[PR]
by tyogonou | 2006-01-18 02:57 | 社会 | Trackback | Comments(0)
謹賀新年
あけましておめでとうございます。
皆様のご多幸をお祈りします。



2006年が良い年でありますように・・・
[PR]
by tyogonou | 2006-01-01 00:03 | Trackback | Comments(0)